月の満ち欠け・月食 / 大石浩之の暦ことばノート
満月なのに月食にならないのはなぜ?2026年秋
満月では太陽・地球・月が並ぶのに、なぜ毎月月食にならないの?
月の公転軌道面は地球の公転軌道面に対して約5.1度傾いているため、満月でも月は地球の影の上や下を通ります。月食には、二つの軌道面の交点付近で満月になり、月が地球の影に入る条件が必要です。2026年9月27日1時49分の満月に月食は起こりません。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。「満月は太陽と地球と月が並ぶとき」と読むと、毎回、地球が光を遮りそうに思えます。それなのに、丸く明るい月を見られるのはなぜか。2026年秋の満月を入口に、国立天文台の資料で確かめました。
私は天文学の専門家ではなく、暦の用語を出典から調べる立場です。今回の説明は天体の位置関係についてのものです。古典の解釈や、月にまつわる吉凶の言い伝えとは分けて読みます。
1.9月27日1時49分の満月は、月食ではない
国立天文台の「中秋の名月(2026年9月)」は、満月の時刻を9月27日1時49分としています。暦要項「朔弦望」でも、同じ日時を確認できます。時刻は中央標準時、日本で用いる時刻です。
月食の有無は、満月表とは別に確かめます。国立天文台の2026年の暦要項「日食・月食など」に載る月食は、3月3日の皆既月食と8月28日の部分月食です。9月27日の満月は、月食の日として掲載されていません。
「9月27日1時49分」は、26日の夜から日付が変わった後の深夜です。27日の夕方を指す時刻ではありません。ただし、この時刻に月食が始まるという意味でもありません。満月になる瞬間と、食の始まりの時刻は別の欄で読む必要があります。
2026年の中秋の名月は9月25日で、満月の日付とは2日ずれます。行事の日と天文学の瞬間の違いは、中秋の名月と満月の違いで扱いました。今回はもう一段進めて、天文学の満月にも月食になる場合とならない場合がある理由を見ます。
2.満月の「反対方向」は、完全な一直線とは違う
国立天文台の暦Wiki「月の満ち欠け」によると、望、つまり満月は、地球の中心から見た太陽と月の黄経差が180度になる瞬間です。黄経は、黄道に沿った方向を表す角度です。満月の定義には、この角度の差を使います。
黄道面は、地球が太陽を回る軌道の面です。その面に沿った方向が反対でも、月が面より上や下にずれていれば、太陽・地球・月の中心は空間内の完全な一直線にはなりません。「反対方向」という短い説明では省かれやすい、このずれが月食を考える鍵です。
月は自ら光るのではなく、太陽の光を反射しています。満月では、太陽に照らされた側がほぼ地球側を向きます。月が地球の影を外れていれば、その明るい面を見られます。丸く見えることと、地球が太陽光を遮ることは、同じ条件ではないのです。
平らな紙に太陽・地球・月を横一列で描く図は、天体の順番を知るには役立ちます。ただし、月の位置のずれを省いた図だけで、毎月の月食まで説明することはできません。図に描かれていない方向がある、と一度立ち止まると、疑問をほどけます。
ここから、ふだんの満ち欠けも区別できます。上弦や下弦の月が半分に見えるのは、地球の影が月の半分を隠すからではありません。太陽に照らされた月の面を、地球からどの向きで見るかが変わるためです。月食では、照らす光そのものを地球が遮ります。
3.約5.1度の傾きが、地球の影を外す理由
国立天文台の暦Wiki「月食の条件」は、月の公転軌道面が黄道面に対して約5.1度傾くと説明しています。二つの面が重なっていないため、満月の位置でも、月は地球の影の上側や下側を通れます。
約5.1度は、自宅から見た月の高さではありません。地平線から何度上を探すかという角度とも別です。また、毎回の満月が黄道面から必ず5.1度離れているという意味でもありません。二つの軌道面の傾きを表す数字です。
月の軌道と黄道面が交わる場所を「交点」と呼びます。傾けた輪が平らな面を横切る二つの場所、と考えると位置関係を追いやすくなります。月が交点付近にいて、同時に満月になると、地球の影と重なる条件が整います。
意外なのは、交点にぴったり重なる必要まではないことです。月にも地球の影にも幅があります。暦Wiki「月食の条件」は、その広がりがあるため、交点から少し離れた満月でも月食が起こると説明しています。点と点の一致だけを探す問題ではありません。
逆に、交点を通るだけでも不十分です。満月でないときに月が交点を通っても、月は地球の夜側へ伸びる影の位置にいません。「満月になる」と「交点に近い」が重なる必要があります。毎月満月が来ることだけでは、条件が一つ足りないわけです。
約5.1度という傾きがなければ、満月のたびに月食になるはずだ、という説明も同資料にあります。小さな傾きでも、影に入るか外れるかを分ける。数字の見た目が小さいことと、現象への影響が小さいことは同じではありません。
4.月が影に入る範囲で、月食の種類が変わる
国立天文台の暦Wiki「月食の種類」では、月が地球の半影に入る場合と、本影に入る場合を分けています。本影は太陽の直接の光が遮られる領域、半影は太陽の一部が地球に隠れる領域です。
本影に月の一部が入れば部分月食、月全体が入れば皆既月食です。半影だけを通る場合は半影月食と呼びます。満月かどうかは月相の区分、どの月食かは影との重なり方の区分です。同じ月を説明していても、分類しているものが違います。
半影月食は、月が少し暗くなる程度で、見た目では気づきにくい場合があります。月が大きく欠けて見えないことだけを理由に、食がなかったと判断するのは早計です。予報を読む際は、「月食」という語に半影月食を含めているかも確かめます。
なお、月食が起きることと、磐田市から見られることも別です。2026年の暦要項は、3月3日の皆既月食は日本全国で見られ、8月28日の部分月食は日本では見られないとしています。地球のどこかで起こる現象でも、自分の場所で月が見えるとは限りません。
月食の進行は、月さえ見えていれば地球上のどこからも同じように見えます。観察場所を変えると影の入り方そのものが変わる、という仕組みではありません。実際の観察では、月が地平線の上にあるか、雲や建物に隠れないかを別に確認します。
5.私なら、満月表と月食表を分けて読む
満月の日時を調べる資料と、月食の有無を調べる資料を分ければ、「満月なのに月食がない」という疑問を自分で確かめられます。2026年9月27日なら、朔弦望の望の行と、日食・月食の一覧を見比べるのが、そのまま確認の練習になります。
私は、暦の表に一つの時刻が載っている良さは、出典に戻って照合できることだと考えます。そのうえで、読み手として気をつけたいのは、一つの欄に答えを背負わせすぎないことです。満月の欄だけで、月食の有無や観察のしやすさまで決めない。この区別は残したいと思います。
正直なところ、どこまで専門用語を出せば説明が伝わるのか、私は迷います。「黄経」まで書くと難しく感じるかもしれません。しかし、「一直線だから」とだけ書いて疑問を残すのも違う。今回は、方向の条件と、影に入る条件を分けるために、この言葉を省きませんでした。
私は、読み終えたその場で月見の予定まで決めなくてよいと考えます。「満月を調べる表のほかに、月食を調べる表がある」と分かれば、判断する材料が一つ増えます。理解できた気になることより、迷ったときに戻れる資料を持つことを、この記事の成果にしたいのです。
月齢の数字から調べ始める場合は、月齢の調べ方を参照できます。新月からの経過日数を示す月齢も、影との重なりを直接示す値ではありません。満月の日を確かめる作業と、食の予報を確かめる作業を分けてください。
満月以外の月を探したくなったら、下弦の月の見つけ方で、朝の時刻と方角を確認できます。この記事の数値・資料は2026年9月27日に確認しました。観察の計画は、対象年の予報と観察地点、その日の空の条件へ戻って考えます。
よくある質問
満月なのに月食が毎月起こらないのはなぜですか?
月の公転軌道面が黄道面に対して約5.1度傾いているためです。満月でも、月が地球の影の上や下を通れば月食になりません。満月になる条件に加えて、月が軌道の交点付近にあり、影と重なる条件が必要です。傾きの5.1度は、観察場所の地平線から測った月の高さではありません。
三日月や半月も、地球の影で欠けているのですか?
ふだんの満ち欠けは地球の影によるものではありません。太陽に照らされた月の面を、地球から見る向きが変わるために形が変わって見えます。月食は月が地球の影に入る現象です。半月の暗い部分と、部分月食で暗くなる部分は、同じ形に見えても仕組みが異なります。
2026年9月27日の満月は、日本で月食になりますか?
9月27日1時49分(中央標準時)の満月に月食は起こりません。国立天文台の2026年暦要項に載る月食は、3月3日の皆既月食と8月28日の部分月食です。日本で見られるのは3月3日の皆既月食です。満月の時刻と月食の有無、観察できる地域は、それぞれ別に確かめます。
調べた資料・出典
2026-09-27 確認
- 国立天文台「中秋の名月(2026年9月)」 — 2026年の中秋の名月は9月25日、満月は9月27日1時49分と確認。
- 国立天文台 暦Wiki「月食の条件」 — 約5.1度の軌道面の傾き、交点付近の満月という条件、影と月の広がりを確認。ページ最終更新2026年8月10日。
- 国立天文台 暦Wiki「月の満ち欠け」 — 地心黄経差180度の満月と、反射光の見える向きによる満ち欠けの説明を確認。
- 国立天文台 暦Wiki「月食の種類」 — 半影月食・部分月食・皆既月食の区別、月が見える場所では同じように進行することを確認。
- 国立天文台「令和8年(2026)暦要項・朔弦望」 — 9月27日1時49分の望を中央標準時の表で照合。
- 国立天文台「令和8年(2026)暦要項・日食・月食など」 — 掲載の月食は3月3日と8月28日。日本では3月3日の皆既月食が見られることを確認。
暦の吉凶は歴史的な分類・言い伝えとして紹介しています。個人の運命や出来事の結果を保証するものではありません。暦の計算法や資料の説明は更新されることがあります。生活上の予定は、関係者の都合や実際の条件を確かめて決めてください。